「植物の葉の萎れ具合をカメラで撮影し、通知する農家や研究者向けのサービス『Wilt Watcher』を開発する中、安価なカメラとサービス開発に役立つAPI、ソラカメ屋外ソーラーキットは、農家の方々の導入のしやすさとサービスの使いやすさに大きく貢献すると考えています」(株式会社 Happy Quality エンジニア 古田祐樹氏)


【この記事でわかること】

・Happy Qualityが農業従事者向けに提供する作物遠隔監視サービス「Wilt Watcher」にカメラを活用

・畑や果樹園で育てている作物の「萎れ具合」をカメラの画像をベースに独自のアルゴリズムで数値化し、通知することで農家の負担を軽減

【ソラカメ活用のポイント】

・防水、防塵ながら安価かつ設置がしやすいクラウド型カメラ「ソラカメ」の採用で、小規模農家でも導入しやすいサービスに

・ソラカメAPIの活用によるサービス開発の効率化

・電源を確保しづらい農家向けには、太陽光パネルとバッテリーがセットになった「屋外ソーラーキット」も一緒に提供

導入の背景

「葉の萎れ具合」を“勘や経験”から形式知へ

農業人口の減少が続く中で、「誰でもできる農業」の実現を目指し、栽培のハードルを下げながら収益につなげるソリューションを提供しているのが、株式会社Happy Qualityです。

同社は、「農家が稼げるビジネスモデルの構築」を掲げ、高糖度トマトの栽培技術と手法をフランチャイズ契約を結んだ農家に提供し、収穫したトマトは一定の価格で全量を買い取ることで、安定的な利益を農家にもたらす「Happy式マーケットイン農業モデル」を推進しています。これにより、より多くの人が農業経営に取り組めるよう後押ししています。

この取り組みを技術的に支えているのが、Happy Qualityが静岡大学と共同開発したAI灌水装置 「Happy潅水」 です。この装置は、従来のタイマー式などの灌水システムでは対応しきれなかった微妙な糖度管理や、天候の急変に伴う水分調整を自動化するもので、トマトの葉の萎れ具合をカメラで常時監視しつつ、温度、湿度、照度などのセンサーデータも加味して、AIが灌水のタイミングを判断・実行する仕組みとなっています。

中でも注目を集めたのが、これまで経験や勘に頼っていた「葉の萎れ具合」の確認を、画像と独自アルゴリズムで数値化し、萎れの程度が一定の基準を超えた場合にアラートを出す仕組みです。この機能は「単体でも農家にとって非常に有用だ」との声が多く寄せられたことから、Happy Qualityではこの機能を切り出し、独立したサービス「Wilt Watcher」として提供することを決めました。

Wilt Watcherの提供にあたっては、導入のハードルを下げる工夫も施しました。これまでAI灌水装置では端末側で行っていたAI分析などの処理をクラウド側に移し、監視用のカメラにはソラコムクラウドカメラサービス「ソラカメ」を採用しました。Wi-Fi環境と電源があれば、利用者はソラカメ対応カメラを見たい箇所に取り付けて、専用アプリにログインするだけでサービスを利用できます。

Wilt Watcherにソラカメを採用した理由について古田氏はこう話します。

「最も大きな理由は価格の安さです。防水・防塵に対応した屋外用のビジネス向けカメラは、一般的に最低数万円はかかるのですが、ソラカメは1台3,980円と非常に安価で、導入時の初期投資を大幅に抑えられます。さらに、プログラムに機能を組み込めるAPIが公開されている点も魅力です。当社のソリューションには、クラウド録画や静止画取得のAPIを利用していますが、将来的にさらなる自動化や省力化を進めるうえで、APIの存在は開発面での大きなメリットになると考えました」(古田氏)

導入の結果

「葉の萎れ具合」のリモート管理が農家の負担軽減に

Wilt Watcherは、大きな可能性を秘めていると古田氏は話します。

「カメラで撮影したデータをもとにAIで数値化した“葉の萎れ具合”は、リアルタイムな萎れ値だけでなく、過去から現在までの萎れ値の推移をグラフ表示することも可能です。こうした、その場で目視するだけでは気付くのが難しかった変化が見えるようになったのは、これまでにない定量的な価値を可視化できたと評価されています。また、気候の急な変動で葉が萎れすぎたときにアラートを出すことができる異常検知の機能も好評です」(古田氏)

加えて、ソラカメには太陽光パネルと充電バッテリーを組み合わせた「ソラカメ屋外ソーラーキット」が用意されているのも、農家の利便性を高めると古田氏は話します。

Wilt Watcherは屋外利用も想定しているため、電源確保が課題となっていました。

「現在、Happy Qualityではキウイの栽培現場で葉の萎れ具合を画像解析する実証を行っています。キウイは屋外で栽培されるため、果樹園には電源の確保が難しい場所も多くあります。今後、Wilt Watcherを屋外で使用する農家の方も増えると考えられることから、ソーラー発電による電源供給のオプションが必要だと判断しました」(古田氏)

さらに、実際に農業現場で使用したことで、Wilt Watcherの具体的なメリットがより明確になったと古田氏は語ります。

「ある農家の方からは、作物によっては朝・昼・晩の1日3回、ハウス内の作物の様子を確認する必要があると聞いています。Wilt Watcherを導入することで、こうした確認作業を遠隔から行えるようになれば、農家の方々の負担を大きく軽減できると期待しています」(古田氏)

今後の展開

国内外への展開と新時代の農業ソリューションの発展を目指して

Wilt Watcherの今後の展望について古田氏は、より多くの農家に活用してもらうとともに、用途の拡大を見据えていると語ります。

「導入のしやすさと初期コストの低さをきっかけに、これまで接点のなかった農家の方々にも使っていただけるようにしたいと考えています。そして、実際に使っていただいた方々からのフィードバックをもとに、『葉の萎れ具合』の検知だけにとどまらず、作物の成長や栽培に役立つ他の画像データも取り込んで、より多角的な分析ができる仕組みへと進化させていく予定です。将来的には、トマトに限らず、さまざまな野菜や果物の栽培に役立つサービスへと展開していきたいと思っています。今後は海外にもWilt Watcher含めた製品展開をしていき、『なくてはならないサービスや製品』と言っていただけるような、農業現場にとってのインフラとして根付かせたいと考えています」(古田氏)

実際に、Happy Qualityはトマト栽培を核とした「Happy式マーケットイン農業モデル」の海外展開をすでに始めており、シンガポールでのプロジェクトも進行中です。これまで“経験と勘”に支えられてきた農業の現場に、データと可視化という新しい視点を持ち込み、誰もが、どこでも、安定して実践できるスマート農業の実現を目指しています。Happy Qualityの新たな農業の形を目指す挑戦は続きます。

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